2012年8月10日金曜日

ロバート・キャンベル≠偽ピーター・バラカン (本の感想です

ピーターバラカンの「ソウルのゆくえ」読んだ。

ZACOにも置いてあるよね!!


数あるバラカン氏のブラックミュージック批評本の中でも、なかなかの良書の部類なのではなかろうか。

ソウルミュージックの歴史を、南部黒人のゴスペルやブルースに遡って振り返り、サム・クックやレイ・チャールズ、JBといったR&B草創期のスーパースターについてもばっちり解説。
さらに、50年代〜60年代の米国を彩った、いわゆるクラシックソウル黄金期の音楽とその進化が、メンフィス、マスル・ショールズ、ニューオリンズ、デトロイト、フィラデルフィアといった都市ごとのアーティストカラーやプロダクションの特徴を絡めてわかりやすくまとめてあり、いわば初心者向きな、王道の構成である。

とはいえ、豊富なウンチクや随所に挿入されるエピソード、なかなか個性的な選択がなされたディスクレビューの数々で、R&Bヲタ予備軍のおまいらも十分楽しめるだろう。

そして全体的なメッセージとして筆者は、68年のマーティン・ルーサー・キングJr.牧師暗殺やNATRAコンヴェンション事件といった社会的出来事に起因する黒人と白人の対立の深化を背景としつつ、ディスコブームも相まって70年代にソウルミュージックからは「何かが失われた」と宣言する。

結局本全体を通じて伝わってくるのが、バラカンさんが

「サザンソウルが好き」

「ディスコが嫌い」

という2点である。

前者については、バラカン氏のイナタ系の趣味が伝わってくるところで、ようは、カントリーとブルースという2大アメリカンルーツミュージックからの距離が非常に近い南部産のソウルこそが彼にとっての「ソウル」なのであり、都会的な洗練を経たモータウンやフィリーサウンドはやや生ぬるいというメッセージだろう。

そして後者はこのメッセージの延長ともとれるのだが、70年代のディスコブームによって導入された享楽的なダンスビートとギラついた世界観が、ソウルミュージックの歴史に不可逆的な切断線を引いてしまったという事実が幾度となく強調される。

TVシリーズ”Glee”でも、「白人がファンクをやるとディスコみたいになる」と揶揄するセリフが登場したように、ポップミュージックの歴史の中でなんとなくネタっぽい扱いを受けることの多いディスコというジャンル。
ディスコだけを専門に扱った研究書もたくさんあるし、ヒップホップやハウスといったその後のブラックミュージックの系譜を語る上でも欠くことのできない領域とは思われるのだが、バラカン世代からすれば毛嫌いするのも無理はないのかもしれないという部分はある。

というのは、51年に生まれ、60年代の黄金時代のソウルを聴いて育ったバラカン氏がディスコから感じる違和感は、ひょっとしたら00年代のR&B(つまりサウンド的には後期ティンバ、デュプリ、初期カニエ、ぎりぎりスターゲイト)がリアルタイムだったわれわれが、昨今爆発的に流行しているエレクトロR&Bから受ける違和感と似ているのではないかと思うからだ。

4つ打ちの大々的導入と、 Tペインに端を発したロボ声はR&Bの出音を大幅に平板化したと思うし、オートチューンブームに乗じて歌いだしたカニエ・ウエストにかつての職人的オールドソウルサンプリングマニアの面影はない。

ヒットチャート上には、あまりにも「それまで」と違いすぎるためオッサンには厳しいという楽曲が多々・・・。






しかし、ディスコが結果として多々のイノベーションを生み出した破壊者となったように(Chicが”Good Times”をやっていなかったとしたら・・・ヒップホップの台頭は遅れていたかも?)、エレクトロファンクもひとつの通過点なのかもしれない。



ソウル/R&Bはもとより、その時勢に応じて「売れる」スタイルを方法論としてときに過剰なまでに摂取し、新しいサウンドを構築して売りまくる、徹底的にマーケット・オリエンテッドな音楽ジャンルである。
何も打ち込み・ディスコサウンドの導入だけをやり玉にすべきではない。
そんなことを言えば、3コードブルースからの脱却、シャッフル/ブギー系ビートの破棄、ゴスペル的方法の採用、モータウン流マス・プロダクション、ニューソウル、Pファンク軍団、メアリーJ以降のヒップホップソウル、ニュージャックスイングなどもすべて黒歴史ということになろう。

そう考えるとエレクトロ二化も、それが今売れるからしゃーないのである。
レコードを売ることにとことん貪欲なジャンル、ソウル/R&bの歴史の一部として受けいれるべき、なのでしょう。


ともあれ、バラカンさんは今のエレクトロサウンドの席巻をどう見ているんだろうか、というのも気になる点では、ありますの。







そんな中、ケリ夫さんの新譜はフィリー系ど真ん中のトラッドなプロダクションで、痺れた。
やっぱブレないって、大切ね。

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