
J. Rawls "Liquid Crystal Project" (2006)
フェンダー・ローズ・ピアノは僕が最も好きな楽器のひとつである。
その音が加わるだけでアンサンブルはとたんに洒脱な印象になる。
内部に小型のヴィブラフォンのような構造を持ち、その振動をアンプで増幅するというのがローズピアノの発音システムだが、このアコースティック楽器の機構と、電子電気機械学的テクノロジーを折衷したような性格が、独特の静謐な印象をその音にもたらしているように思っている(ゆーたらエレキギターとかもやが)。
ジョー・サンプルやボブ・ジェイムスなどが名手として知られている。
主にはメロウ・フュージョンやEW&Fのようなディスコミュージックに用いられているイメージが強いかもしれないが、僕はジャジーなサウンドにこそ合う楽器なのではないかと思う。
ところで菊池成孔は、「00年代になってニューヨークはジャズの街ではなくなった、あるいはニューヨークといえばジャズというイメージは潰えた。"Sex&The City the movie"は、BGMにジャズが使われなかった最初のニューヨーカー映画だ」と述べた。
だが、ソフトバンクのCMで、ニューヨークの摩天楼をバックに『世界にひとつだけの花』のジャズアレンジを歌うSMAPをみるにつけ、まだまだ人口に傀儡したニューヨーク→ジャズのイメージは根強いと感じる。
この『世界にひとつだけの花』jazz ver.でフィーチャーされているのは、ベニーゴルソン風のサックスと生ピアノである。
そう、ジャズが生ピアノのサウンドから得ている恩恵は果てしなく大きい。
生ピは存在そのものがオッシャーであり、モダニズムを象徴するガジェットだからである。
しかしである!
菊池氏がニューヨーカー映画の最古典として挙げていた"Taxi Driver"のテーマ(名曲すぐる)のオリジナル版でフィーチャーされていたのは、トム・スコットのサックスとローズピアノだったのをご存知だろうか(あ、でもウーリッツァーかも(爆))。
これがいかにもハマっておりまして。
もちろん生ピフィーチャー版も存在するのではありますが。
ま、そんなわけでTaxi Driverは僕のお気に入り映画なのである。
このジャジーなテーマ曲に生ピでなくローズをぶつけてきた点からだけでも、慣習や伝統に迎合せず映画制作の新たな地平を切り開いたスコセッシの心意気がいかにも感じられるではないか。
映画の内容も凄く好きですもちろん。You talkin to me??huh??!!
("Shattered Island"見に行きたいなー)
またしても前置きが長くなりました。
そんなローズピアノ好きな僕が一押しする、絶品ローズピアノが聴けるCDがこの、J. Rawlsの"Liquid Crystal Project"というわけです。
このCDはもういろんな人に「これいいよーいいよーあーこれいいよーいいよーあーあー」って言ってるんで僕の周辺にいる人はすでに知っている場合も多いかもしれません。
シンシナティのジャジーヒップホップ集団ローン・カタリスツのDJでありトラックメイカーであるJ・ロウルズさん。
それ以外にもエリック・ロバーソンやミドルチャイルドといったネオソウル系シンガーのプロデュースを行ったり、最近ではラッパーのジョン・ロビンソンと結成した新ユニットでアルバムを発表したりとマイペースながらもコンスタントな活動を続けておられます。
驚きなのが、この人は平日はフルタイムの小学校教師だというところ。
そして2児の父でもある。
すごいなあ。。週末だけの作業でこれだけハイクオリティな作品を生み出し続けるとか。。。まじリスペクトっすわ。ロウルズ氏。
Liquid Crystal Projectはそんな彼の手になるヒップホップ名曲インストカバー集であります。
Pete Rock & CL Smoothの"T.R.O.Y."やPharcydeの"Runnin'"といったクラシックから、Bobby Hutchersonの"Montara"などの「サンプルネタ」クラシックまで、先人への敬意と愛に満ちたハイセンスなアレンジで聴かせてくれます。
もちろん全編生バンドによる生演奏。ラップは一切入っていません。
特にコモンのコモン・センス時代の名曲である"Take It EZ"再解釈である"Still Taking It EZ"は、今自分のiTunesに入っている曲の中で一番好きかもしれない。。というくらい好き。
最近はヒップホップの人のインスト集っていっぱい出てるし、メロウでビューテホーなものなら他にもたくさんあるけれども、この人は純粋にDJなので、センスが独特なのかなと思う。
それぞれの楽器の美味しいところだけを抽出している独特のミニマリズムと言いますか、控えめなところが良いです。
それは楽器プレイヤーにはない感覚かなと。
決してトゥーマッチにならないから飽きない。巷のメロウ/ジャジーヒップホップって大概すぐ飽きるんですけどもね。
パッと聴き気持ちよい音楽といつまでも心地よい音楽というのは両立しにくいものだと思います。
ローズピアノにしても、曲によってはシンプルなリフだけだったりするし、本当にワンポイント使いなときもある。
それででいて楽器の音色にすごい存在感があって、わかってますな!!
ローズが好きなのがびしばし伝わってくるよ。曲によって微妙に音色を変えていたりするし。
ただ単にローズとか生ピアノ使いまくればオシャレになるやろーって使ってるその辺のジャジーヒップホップ屋とは違いまっせ。
そしてこの人はヒップホップという音楽の最大の旨味である「ループの気持ち良さ」を殺してないから好きです。
アレンジの幅も決してカラフルではないのだけれども、どこを切ってもJ.Rawls印で、好感が持てますな。
なんかこの人には侍のようなイメージがある。
侍が赤ん坊を背負って、黙々と傘を貼っているイメージ。
渋いですT_T
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