2014年9月5日金曜日

Open & Close (読書



『オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件』(小川紘一2014)

東大政策ビジョンセンター小川先生の著書。

簡便に言えば、かつてのヘゲモニーを失った日本の製造業を再興していくうえで、
21世紀型の競争ルールに則ったビジネスモデル構築をやっていきましょうというおハナシでした。

特に、単なる技術R&Dだけでなく、知財戦略に配慮した「オープン&クローズ戦略」を核とした事業設計をやっていく必要がある、というのがメッセージとなっている。


この「オープン&クローズ戦略」とは、標準化を通じてイノベーションを誘引する「オープン」な開発や販売を行う領域と、付加価値の高い部分に関連する知財を囲い込んだりブラックボックス化して、自社への利益の核となる領域を確保する「クローズ」な部分をきっちり分割して事業と市場をコントロールしましょう、というものである。


さて、20世紀の製造業の変化は大きく3つの側面に分類される。

①テクノロジーの進展
②生産システムの変化
③市場の変化

である。


まず①テクノロジーとして何が変わったか については、インパクトが大きかったのは半導体の急激なコストダウン・高性能化と、インターネットの普及に象徴される情報ネットワークの拡大である

この結果、ものづくりのデジタル化(アナログな技術のすりあわせによるものづくりに対置される)、ソフト化(ものづくりの付加価値がソフトウェアに依存するように)、モジュール化(多能工に依存しない、技術の細分化と再統合の仕組みの発達)、システム化/サービス化が進展した。

現代のものづくりにおいて、情報と物質は一体化している。


次に②生産システムの変化についてだが、顕著なのグローバルな水平分業の進展である。

ファブレス・デザイン・カンパニーやファンドリーのような業態の台頭はこれを象徴する現象である。また、製造装置を介した技術のスピルオーバーも看過できない。ヒト・モノ・カネでいうカネだけでものづくりができるようになってきているということだ。

そしてハイテク製品の生産拠点がグローバルに拡大した結果、新興国の台頭を招いている。この結果、製品の設計段階に付加価値がシフトしてきている。


③市場の変化は最もインパクトが大きい。
端的に言うと市場のグローバル化である。Apple製品などでもわかるとおり、ひとつの商品を一気に全世界50億人、60億人の顧客がいる市場に売り込めるようになっている。

この後景には国際的なサプライヤー網の発達も横たわっている。グローバルな多売戦略により、ベンダの原材料サプライヤーに対する価格交渉力は必然的に強くなる。したがって、ある製品をどこでデザインし、どこから材料を調達し、どこで組み立て、どこで売るか、すべての選択肢がグローバル化しており、大きな意味でのSCMに変化をもたらしている。
いっぽうで、販売後のサービスはローカル市場にとどまっていることにも留意しなければならない。
製造業では設計段階に付加価値がシフトしつつあるとはいえ、Appleはハードウェアだけで利益率50%以上を実現しているという推計がなされている。ものとしてどの部分で儲けることができるのか、どこで価値が出るのか考えたうえで、事業を設計する必要がある。

今後の日本の製造業は、技術的な強みも押さえつつ、システムとしてどう強くするかが大切なのだろう。例えばすばらしい高性能材料を作っている企業があっても、それを買い叩かれないように、価格を守る必要がある。それをどう守るか、高付加価値を維持するかといった視点が必要だろう。また、液晶技術に関しても日本企業は高い技術があるにも関わらず勝ち組はいないことからもわかるとおり、技術以外の部分がとても重要だということである。
高付加価値を維持する、という視点もだが、既存技術との組み合わせによってどうやって新技術の応用を進めるかといった観点も重要なのでは。例えば東レの炭素繊維はBoing787で独占使用され話題になったが、実際にはB787の前にBMW等、欧州の自動車メーカーが製品応用を進めていた。


著者の言うとおり、何をオープンにして、何をクローズにするか、標準化するかについての戦略が重要なのである。

これまでこういった領域は企業の自助努力に任されてきたわけだが、政策的に誘導する余地はないのだろうか。そのようなビッグピクチャを描ける人材がいない、という気もするが。

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